韓国留学

韓国留学体験記

 語学堂、大学、大学院留学経験者

K.Yさん(兵庫県出身)

 小学生のころから大好きだった韓国舞踊を学ぶ為に、1987年 に延世大学の韓国語学堂に留学し、その後ソウル芸術大学、放送大学、淑明大学の大学院を卒業。現在は韓国の無形文化財に指定されている先生の元で舞踊のレッスンを続けながら、日本語学校の講師と履修生として二束わらじでステップアップを続ける一方で、更に今年からはもう一つ、延世大学の韓国語の講師養成講座で勉強中という、まさに韓国留学ブームのパイオニア的存在で毎日大忙しの在日韓国人のK.Yさんに、大学院時代のお話を中心にお聞きしました。

今日はお忙しい中どうもありがとうございます。ところで早速ですが、はじめに韓国に留学しようと思ったきっかけは何ですか?

わたしが高校を卒業したのは、ちょうどソウルオリンピックの前年度で、ちょうど韓国は全体的に雰囲気が盛り上がり始めていた頃だったったんです。日本のニュースでもそんな韓国の様子がよく報道されていましたので、ぜひこのタイミングに自分の目で韓国という国を見てみたいと思ったんです。もちろん、いずれは現地で子供の頃から大好きだった韓国舞踊学びたいと思っていましたので、まさに来るべくして来た絶好のタイミングでした。

ところで、韓国で大学を2つ卒業されていますが、特に理由はありますか?

はい。わたしが一番始めに卒業した大学は、今は名称が変わったので『ソウル芸術大学』と言うのですが、その頃はまだ専門大学だったんです。この大学を卒業すると教員免許の2級は取れるのですが、あくまでも2年生の大学の卒業にしかならないので、大学院に進学するためにはあと2年必要ということで、放送大学の日本語科の3年生に編入しました。

なるほどそうだったんですね。ところで昨年卒業なさった淑明大学の大学院の入学試験は実際にどのような感じで行われましたか?ぜひ、具体的な内容を教えて下さい。

はい。舞踊科の場合には他の文系の学部とは違って、書類審査や面接だけでなく、実技の試験があることがほとんどなので、わたしの場合も3分以内の作品を踊りました。また、面接の際に韓国の舞踊に関する常識や今後の豊富について質問されました。

大学院に進学するにあたり、前もって各大学院の事前調査などはしましたか?

はい。韓国の大学院だけに限らずに、やはりその大学の教授の指導方針や派閥などが今後も重要になるので、自分の学びたい舞踊に精通している教授のいる大学をいろいろな人を通じて探すようにしました。淑明大学の大学院に関して言えば、わたしの学びたかった伝統舞踊に強く、同じ舞踊でもモダンダンスや創作などを学ぶ人にはどちらかと言うと少し不利になる可能性があったと思います。いずれにしても、こうした情報は様々な人脈を通して口コミなどで知り得たものもありますし、実際に大学院を訪問して雰囲気を見るなどして前々から調べるようにしていました。

大学院の授業は一週間に何時間くらいでしたか?

わたしの学科では、実技のプログラムがあるので1回につき2時間の授業を連続して2コマずつ受けるのが普通でした。ですのでいつも夕方6時から授業が始まると、終わるのは10時くらいで、こうした授業が一週間に2回と、これ以外にも舞踊に関する様々な見学授業などがありました。

同期は何人くらいでしたか?

一般の大学院の場合は、おそらく4~5人くらいが普通だと思うんですが、わたしが入学した年はうちの学科では通常の年よりも多くて11人が入学しました。

11人は全員卒業しましたか?

いいえ、そのうちストレートに卒業できたのは2人だけです。あとの9人は途中でドロップアウトしたり、休学をしたりしたので途中からあまり顔を合わせる機会も減ってしまいました。むしろ他の期の人たちと一緒に勉強する機会が多かったので縦の関係の方が長く続いています。

2人だけしか卒業できないとはいろいろな面でたいへんなのでしょうね。Kさんも大学院の留学生活で何か苦労したことはありますか?

実技の授業自体は自分の本当にやりたかったことでしたので毎回楽しかったのですが、一番苦労したのは何といっても論文ですね。わたしは在日韓国人ですが、日本で生まれ育ったので韓国語はネイティブではでないんです。ですから、韓国語で論文を仕上げる際には知り合いの韓国人や、担当の教授に自分の論じようとしていることが正しい韓国語で表現されているかを何度も確認していただきました。それと、舞踊に関する一般教養の話の中には、韓国の宮廷舞踊についての基礎知識や中国の陰陽説、儒教の話、哲学に関する専門用語が数多く出てくるんですが、こうした知識を韓国語で理解するのにもかなり苦労しました。

日本語で論文を書くのも難しいのに、それを韓国語で書くとなると更にたいへんですよね。ところで卒業論文の制作にはどれくらい時間をかけたんですか?

わたしの場合は、以前に卒業した放送大学のころから大学院に入ったら研究したいと思っていたテーマを決めていたんですね。それで資料集めはそのころからしていたので、実際の作成期間は6ヶ月程度でした。でも、前もって資料集めをしていなければもっとかなり時間がかかったでしょうね。実際にできあがった原稿は表などの資料も含めて80枚ほどだったんですが、日本を含めて関係者からインタビューをさせて頂いたりして仕上げました。

韓国の大学院の卒業試験には論文だけでなくさらに英語が課されることが多いと聞いていますが、実際にはどのようなものが出題されましたか?

そうですね。わたしの学校の場合は小説やコラムが一冊になった本があり、その翻訳が試験として出されるんです。でも当然その翻訳はハングルで書かなければなりませんし、辞書の持ち込みは不可ですから英語も韓国語もネイティブでないわたしにとってはとても難しいものでした。でも、唯一の救いが、英語の授業は録音が可能だったんですね。もちろん指導教授の許可を受けてからなんですが。それで授業に出るたびに毎回録音をして、試験前にはその録音したものを頼りに徹底的に勉強しました。正直録音するだけで膨大な数だったので本当にたいへんでした(笑)

たしかに毎回録音をするなんて聞いただけでたいへんそうですね。ところで、いろいろとあると思いますが、大学院に進んでみてよかったと思う点は何でしょうか?

まず、自分の学びたかった先生について踊りについての知識や実技の能力を高めることができたというのが何よりも一番だと思いますが、それ以上に、踊りをしている人間関係の幅が更に広がったということがよかったですね。特にわたしの通っていた大学院は特殊大学院だったこともありますし、踊りの分野で入学してくる学生ということで、年齢層もかなり上の大先輩が多かったんです。こうした普段は出会う機会の少ないこうした人たちとのつながりを持つことができたのはわたしの人生にとって貴重な財産だと思っています。

最後にこれから大学院を目指している人に何かアドバイスをいただけますか?

そうですね。わたしのように特殊大学院で勉強する場合にはもちろん専門知識や実技も大切ですが、ともかく一般大学院での勉強も含めて何よりも韓国語をかなり勉強していないと授業についていくのはもちろん、レポートや論文を書くのがかなりたいへんだと思います。これから留学をする予定の方は十分に韓国語の力を高めておくといいと思います。それさえクリアすればおそらく自分の決めた科であれば十分に楽しく学べると思いますので、ぜひがんばって下さい。


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